作家の鏡明氏が、雑誌『フリースタイルVol.45』で堀井六郎・著を紹介!

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★作家の鏡明氏が、2020年8月15日発行の雑誌『フリースタイル〔Vol.45〕』(フリースタイル刊)で、作家の鏡明氏が、堀井六郎・著『私的「昭和大衆歌謡考」』について書かれているので、ご紹介します。

(連載)45RPMから始まる/鏡 明

第19回 デル・シャノンについて語っておきたい

(『悲しき街角』などで知られる米国シンガー、デル・シャノンに関する詳細な論評が10ページほど綴られてから、次の文章が続きます)

ここでデル・シャノンの話は終わりにしてもいいのだが、付け加えておきたいことが幾つかある。

デル・シャノンは過小評価されているミュージシャンの一人に挙げられることがある。デル・シャノンのことに言及している文章は意外に少ない。日本でも、ほとんどないのではないか。「街角男」という奇妙なレッテルも災いしているのかも知れない。それもぼくがデル・シャノンを取り上げたいと思った理由でもある。見過ごされている人たちに妙な愛着がある。

だから、堀井六郎の『私的「昭和大衆歌謡考」』の中にデル・シャノンに一章を設けているのを見つけたときにはうれしかった。「ファルセット唱法の啓蒙家、デル・シャノン」、その次の章も「ストリート・コーナー・シンフォニーと「街角男」の系譜」としてデル・シャノンに触れている。

『私的「昭和大衆歌謡考」』は日本音楽アカデミーの「作詞通信講座」の会員向けに刊行されていた「ミュージック・フォーラム」に連載されていた「歌謡コラム」を新書四冊にまとめたもの。<既刊本に多く見られるような大ヒット曲や有名歌手やアイドルについての分析を試みる「歌謡曲評論」や「時代と流行歌との関係性」を探るような内容にはしたくなかった>とした上で、昭和三十年代から五十年代にかけての時代を中心に、個人的な記憶によるマニアックなものにするとしている。

ぼくが書いているものとは正反対のスタンスだと思うのだけれども、これが素晴らしい。歌謡曲や日本のポップスだけではなく海外のポップスまで含めて語られている。歌手やミュージシャンだけではなく日本の作詞家や作曲家に詳しく触れているところが、いやぁ、知らないことが数多く含まれていて、面白い。

たとえば「常識破りの唱法、前川清の楽しみ方」「歌謡史に残らない大ヒット曲量産男・三木鶏郎」「雨の夜、島和彦は静かに歌う」とかね、読みたくなるか、パスしたくなるか、微妙な線のタイトルが並んでいる。

で、前川清の唱法について読んでみると、それまでの演歌とどのように異なっていたのか、それは息継ぎと息遣いにあるというような技術的な部分を含めて、説得力のある説明がなされている。ぼくも前川清が気に入っていたから、そうかそういうことだったのか、と納得させられた。

デル・シャノンについては西郷輝彦の「星娘」、作者の浜口庫之助から始めて、かれのファルセット唱法、その魅力について語っている。西郷輝彦とデル・シャノンをファルセットで結ぶという意外性が堀井六郎の腕の見せ所という感じがする。

コラムの終わりには参考文献もついていて、先述のかれの伝記『Stranger In Town』も入っている。すごいですね。ぼくもアマゾンで買おうかと思ったのだが、ペーパーバックで一万円を超えていたり、情報量の多さを褒めているが、書き方が酷すぎて読めたものではないというレヴューを見てパスした。海外の資料にも目を配っていることには感心してしまう。

ちなみに堀井六郎というのはペンネームで、バディ・ホリーとロックンロールから付けたのだそうだ。ロックンロールが六郎になるというのは発見ではなかろうか。(後略)

(以上、雑誌『フリースタイル〔45〕』掲載記事、鏡明『45RPMから始まる』より抜粋)

※デル・シャノンにご興味のある方にとっては全文必読の内容でしょう。おそらく、ここまで詳細な「デル・シャノン論」は本邦初だと思います。ご参考まで。(グスコー出版 編集部)